市民ダイアログ2022

市民ダイアログ(栃木県)

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」(以下、SIP自動運転)では、自動運転に対する社会的受容性の醸成を目的とした取組として、栃木県で「市民ダイアログ」を実施しました。

1.開催趣旨

SIP自動運転においては、自動運転技術を活用したサービスや車両の実用化及び普及に向けた社会的受容性醸成の取組の一環として、市民との対話の場「市民ダイアログ」を継続して実施しています。
今回は栃木県における自動運転バスの取組“ABCプロジェクト”を対象に、新型コロナウィルス感染症への対応を考慮に入れ、オンサイトとオンラインのハイブリッド形式で市民ダイアログを開催しました。当日は、SIP関係者、及び栃木県とその交通に関する有識者・関係者による基調講演及びパネルディスカッションと、会場観覧客・オンライン視聴者からの質問に回答する形での対話が行われました。

2.全体の概要

◆ 日時 2022年4月20日(水) 15:00~17:00

◆ テーマ 地域の実情に応じた持続可能なモビリティサービスの構築に向けて ~オール栃木の挑戦

◆ 実施形式 オンサイトとオンラインのハイブリッド(登壇者と会場観覧客は栃木県総合文化センターに集結/オンライン視聴者数:195名)

◆ 司会
石井昌道氏:SIP自動運転 推進委員/モータージャーナリスト

◆ ファシリテータ
清水和夫氏:SIP自動運転 サービス実装推進WG構成員/国際モータージャーナリスト

◆ 登壇者
栃木県 県土整備部長:坂井康一、同 交通政策課 主査:安生真人
栃木県茂木町 企画課 主任:松崎健二
栃木県小山市 都市整備部 技監:淺見知秀
本田技研工業株式会社 モビリティサービス事業本部 エグゼクティブチーフエンジニア:奥康徳
株式会社みちのりホールディングス ディレクター:浅井康太
(リモート登壇)白鴎大学経営学部メディア実践ゼミ:川又万由佳さん、神戸美咲さん、牧野甘那さん

◆ 当日のプログラム

開 会
15:00 開会挨拶 石井 昌道 氏(SIP自動運転 推進委員 モータージャーナリスト)
15:05 基調講演 テーマ:SIP自動運転の取組み紹介
清水 和夫 氏(SIP自動運転 サービス実装推進WG構成員 国際モータージャーナリスト)
15:10 基調講演 テーマ:栃木県の公共交通の現状と課題
坂井 康一氏(栃木県県土整備部長)
15:20 基調講演 テーマ:栃木県ABCプロジェクトの推進
安生 真人氏(栃木県県土整備部交通政策課 主査)
15:35 パネルディスカッション 開会アナウンス
石井昌道 氏(SIP自動運転 推進委員 モータージャーナリスト)
15:37 イントロ①:自動運転モビリティサービスに向けたHondaの取り組み
奥 康徳 氏(本田技研工業株式会社 事業開発本部 エグゼクティブチーフエンジニア)
15:52 イントロ②:みちのりHDの自動運転への取り組みと将来構想
浅井 康太 氏(株式会社みちのりホールディングス ディレクター)
15:57

<パネリスト>
坂井 康一氏(栃木県県土整備部長)
安生 真人氏(栃木県県土整備部交通政策課 主査)
奥  康徳 氏(本田技研工業株式会社 事業開発本部 エグゼクティブチーフエンジニア)
浅井 康太 氏(株式会社みちのりホールディングス ディレクター)
松崎 健二氏(栃木県茂木町企画課 主任)
淺見 知秀 氏(栃木県小山市都市整備部 技監)
川又万由佳さん・神戸美咲さん・牧野甘那さん(白鴎大学 経営学部 メディア実践ゼミ)※リモート登壇

<モデレーター>
清水 和夫 氏(SIP自動運転 サービス実装推進WG構成員 国際モータージャーナリスト)
16:45 Q&A (全員)
16:55 閉会挨拶 グラレコ成果物紹介&クロージングコメント
石井 昌道 氏(SIP自動運転 推進委員 モータージャーナリスト)
閉 会

3.パネルディスカッション概要

Q:
自動運転の社会実装に向けては、お金だけではなく、現場で社会と向き合いながら引っ張っていくリーダーが必要。誰がやるべきだろうか?
A:
行政のサポートは資金面や市民の巻き込みの面で非常にありがたい。ただ、実際に事業として維持・運用するのは、交通事業者の役目。交通事業者の中には、自動運転技術の導入に積極的なところもあれば、そうではないところもあるのが実態だが、ホンダの奥さんの講演にあったように、バスに近い新しい移動サービスになると納得できれば、どの事業者も積極的に関わろうと思えるはず。社会的受容性の醸成は、市民向けだけではなく、事業者向けの場もあっていいのではと思う。
Q:
国、県、市町村などで連携を進めていくために、それぞれどんな役割が期待されるか?
A:
役割分担としては、国は目標を示すことや、関連制度を設計し、官民で共通認識を持てるようにすること、県や市町村は、自動運転技術なら自動運転技術が社会の課題解決にどこまで使えるか、これを実証する立場である。県は、全体方向性との整合または地元の社会課題解決、どちらに比重を置くべきか難しい立場にあるが、個々の市町村だけでは解決できない広域的な地域課題の解決に向け後方支援すること、また、国の動きを把握し、市町村の課題解決の為にマッチングまたはコーディネートすることが求められる。
Q:
欧州の中でもフランスでのMaaSの動きに関しては、NPO法人などにより市民の声を行政に届ける仕組みが強力に機能しているように見受けられる。日本では、どうやって市民を巻き込んでいくのがいいのだろうか?
A:
茂木町は今回のABCプロジェクトで、トップバッターだった。町からいろんな住民団体にアピールして利用を働きかけ、最終的には高い乗車率を達成できた。町のアドバンテージであり役割は、住民との距離が近いこと、町民との密接な関わりを持つことと再認識した。小山市のバス事業でも利用者数が低迷していたが、生活情報を盛り込んだフリーペーパーを6万部刷ったり、SNSでの情報発信に取組んだところ、Twitterのフォロワー数が5千人になり、利用者数も回復するなどの効果が出てきている。
Q:
小山市の白鴎大学の学生さんは、小山市の自動運転バスの取組を知っていたか?
A1:
所属しているゼミで定期的に下野新聞に記事を寄稿しており、その一環で小山市の自動運転プロジェクトを取材したが、知ったきっかけは大学の先生からの情報提供だった。
A2:
小山市としても若者へのリーチを狙ってインスタグラムでの発信にも取組んでいるが、なかなか届けたい人に届けられていない。
Q:
ゼミでインスタグラムの発信にも取組んでいると聞いているが?
A1:
ゼミの取組として、取材で得た情報をインスタグラムでコンスタントに発信している。
A2:
タグ付けの工夫や、コンスタントに投稿してアクティブ感を出すなど試行錯誤している。 自動運転は一般人には理解が難しい内容が多いので、簡単な言葉で短くわかりやすく伝えることが大事。
Q:
学生の方々に、小山市のフェローになってもらって支援してもらうのがいいのではないか?単位が取れるようにゼミの先生に相談することが必要かもしれない。日本は、産官学が独立して取組んでいるケースが散見されるが、海外では、大学と行政、大学と民間企業が一体となってモノゴトに取組んでいる。今回をきっかけとして、ぜひ白鷗大学の学生と連携することなどを考えて欲しい。
A:
アカウントを一緒に管理するなど、連携できないか模索したい。
Q:
サービスが多様化するとユーザーに対してレコメンド機能が必要になってくると考えられ、そのためにはデータの利活用も課題になってくるのではないか。
A:
データの利活用は必ず必要になってくると考える。公共交通が抱える課題として効率の悪さがある。現在はデータがとれていないため、コスト的な観点でのみで改善案が検討されているが、データを活用することで需要を把握したり、配車アルゴリズムの元データとしても活用ができると考える。自動運転車両であれば様々なセンサが内蔵され、データが蓄積されると考えられるので、それらのデータを活用することで、効率化につながると考える。
Q:
データを活用することで効率化につながることは理解できたが、データの所有権は、誰にあると考えるか。
A:
データは、車両の運行情報(走行ルートや運賃など)と個人に関わる情報(個人がどの様なルートで移動したかなど)がある。運行情報に関しては、オープンな情報であり、自由に使えると思う。個人に関わる情報は個人にあり、取扱いや活用などは様々な議論がなされており、国ごとでも考え方が違う。日本でも議論はされているがまだ結論は出ていないと考える。

視聴者とのQ&Aセッション(一部抜粋)

Q:
自動運転で得られたデータ(プローブ情報)を地域社会にどの様に還元するのか。
A1:
個人がどの様なルートを走行したかなどの個人情報をオープンにすることはしていないが、災害時にどの道路が安全であるかなどの参考データとして公開しており、実際に3.11で活用された。
A2:
都市整備ではあまり、自動車メーカーと情報交換することが無く、自動車がどの様なデータを持っているのか正確に把握していないので、都市計画を立てる上でも今後は連携していきたいと考える。
Q:
オンライン化・省力化は、従来の職業ドライバーからみると脅威に映る面もあると思う。そういった方々の理解を得るにはどうすればよいか。
A:
職業別平均寿命を見ると、大型車両ドライバーには循環器系の疾患が多い等、もの凄いストレスがかかっていることが分かる。それが一定の程度自動化ということになれば、彼らの労働環境を改善することになり、メリットと呼べると思う。
Q:
ドライバーの気の張りを緩和するということか。
A1:
その通りで、例えばバスの乗客はシートベルトをしていないため、バス運転手は急ブレーキを踏まないよう非常に気を遣う。バス停到着時の”正着”を自動化することで、バス運転手の負担を軽減することができる。
A2:
一つ違う視点として、バス会社にとってはバス運転手の不足や、以下に路線を維持するかが大きな課題。そのなかで多少の自動化が行われたからといって、直ちにバス運転手の不要論にはつながらない。また、技術の完成から社会実装までには非常に時間がかかる。例えば、地方部ではバス車両を20年間使用する。その入替サイクルも考えれば、自動運転バスへの置き換わりは時間軸としても穏やかなものになるのではないか。
Q:
県民にとってはまず『バスを使うことで(自動車を使っている)現状より便利になる』という発想がないと思う。自動車を運転できる人も、バスに乗車しなければならないのか
A:
多様なオプションを用意し、それぞれの時間・コスト・快適性を勘案して選択すればよい。
Q:
既にある困り事(公共交通の維持など)の側面に、まずは自動運転を充てていくということですよね。
A1:
自動運転を導入するというだけでなく、オンデマンド交通や、ドライバーの運転環境を改善するという観点も必要。それによってドライバーの志望者を増やしたり、高齢ドライバーの働き方を持続可能なものにしたりすることができる。自動運転に資する技術(ドライバーモニタリング等)は、人のウェルネスや健康管理にも応用できるもの。業界の垣根を超えた会話を通じて、新たな価値が生まれていくことが期待される。
A2:
自動運転技術は未だ発展途上。すべてが直ちに置き換わるわけではなく、人にしかできないサービスは必ずある。マルチモーダルなモビリティを提供することで、社会課題の解決や街の活性化に貢献したい。
Q:
LRTや既存の公共交通と自動運転はどのようにつながるのか。具体的なイメージが湧きづらい。
A:
例えば、LRTの停留所を降りた後、目的地までの”端末交通”の問題がある。わずか1-2kmのラストワンマイル交通があることで、例えば徒歩・自転車移動が難しい人もLRTを利用できるようになるかもしれない。この端末交通の選択肢の一つとして、自動運転が入ってくることが考えられる。

4.当日の模様

  • 【登壇者によるディスカッションの模様】

    登壇者によるディスカッションの模様
  • 【グラフィックレコーディング】

    グラフィックレコーディング01 グラフィックレコーディング02